熊取町商工会は、大阪府の南部・泉南郡にあり、商工業者の経営支援や地域の活性化を図るために、さまざまな事業を行っています。商工会ってどんなことをしているの?の他に、ちょっと変わった気になる取り組みについてもお話を聞いてきました。
今回は、熊取町商工会の東さんと、地域活動に一緒に取り組んでいる株式会社スピッカートの細尾さん、濱田さんにお話を聞いてきました。場所は、スピッカートさまの事務所。お庭もあったりで素敵な空間ですね。
左:東さん (熊取町商工会 事務局長)
中:細尾さん(株式会社スピッカート CEO, Creative director)
右:濱田さん(株式会社スピッカート Director)
商工会は、基本的には商工業者の経営支援が主な活動だと思いますが、どのようなことをされていますか?
■地域の一員であるということ
東さん
「基本的には、会員さまの経営支援になると思いますが、うちの職員は経営相談以外にも対応していることが多いと思います。例えば、以前、ゴールドステッカーの申請で、大阪府に提出する書類の中に『期間中、営業している証拠写真を撮り同封してください』と指示ありました。でも、お店の店主が高齢で指示通り撮影できなくて困っている中、職員がお店を訪問し、手取り足取り教えながら撮影するということを何回もしていました。申請書類上、そういう部分って表には見えてきませんが、けっこう大変なんです。でも距離感というか、地域と一緒にということを大切にしています。
私は、生まれも育ちも熊取町なので、〇〇のお店のおっちゃんとは小さいときから知り合いでとか、いつもよく買い物に行くのでとか、そういう前提があり、商工会の職員である前に地域の一員なので、この感覚が普通なのかもしれません。」
すごい距離感で日々 支援されているのですね。他にも色々な取組みをされていますが、ホームページに載っている「くまとりうまいガイド」がかわいくて気になっていました。
■『よそ者』だから見えること
東さん
「もともと、クーポン券付き商業MAPのような名称の事業で、ある程度、企画の枠組みも決まっていました。制作していくにあたり、熊取町役場の仕事をされていた関係で細尾さんを紹介いただきました。」
細尾さん
「少し前に熊取町に引っ越してきていました。1年もしない内に商工会にも入会しました、人からの勧めもあって。私たちのデザインの仕事って、どこに住んでいてもできる仕事です。でも、できれば会える距離感で仕事をしてみたいなって思っていました。私の出身の和歌山や大阪の仕事などはあったけど、地域の仕事はありませんでした。」
東さん
「こういうMAPって普通だと、お店の外観とか食材をきれいに撮ってというのが当たり前だけど、細尾さんの提案で、そのお店にはどんな人が働いているのかというヒトを中心に制作することになりました。」
細尾さん
「私も『よそ者』だったので、知らないお店には入りにくいんですよね。イオンとかのチェーン店は問題ないけど、例えば、商店街の中に個人経営のお米屋さんがあっても入るのが怖い。だから、まずは人柄が見えるのがいいんじゃないですか?って提案しました。
店主の皆さんに熊取町商工会に集まっていただき、入れ替わり立ち代わり撮影させていただきました。商品も持ってきて欲しいとお願いしていて、ハンバーガー屋さんには、両手にハンバーガーを持ってもらいながら撮影しました。これが、初版2013-2014号です。」
『よそ者』だからこその着眼点が面白いですね。写真一つを見ても思いますけど、コンテンツが面白いですね。
■信頼関係の上に成り立つ「お任せ」
東さん
「初版が好評だったこともあり、引き続き、スピッカートさんにお願いすることになりました。次々と新しいアイデアを提案してもらえるし、一緒に制作していて楽しいんです。例えば、この表紙(写真の駅改札にいるクマの着ぐるみ)の着ぐるみに入っているの私なんです。次は何をさせてもらえるのかなって、いつも楽しみでした。」
細尾さん
「逆に、提案したことを何でもやらしてもらえたってことも大きかったです。かなり無茶なお願いもしましたけど。」
濱田さん
「例えば、『このA4サイズで作ってください。それ以外は認めません』とか制限だらけであれば生まれていなかったと思います。東さんからは、『こうしたい』っていう想いだけをいただき、それをカタチにするために僕らが考える。で、提案したら快くやりましょうって言ってもらえました。
子どもの写真を撮りたいって言ったときも、商工会の会員さまの幼稚園の園長さんに依頼してもらいました。この表紙に載っているおじいちゃんもシルバーセンターの方に『商工会の冊子を作っていて協力いただきたいのですが、いい感じのおじいちゃん知りませんか?』って言ったら紹介してくれました。そして、小学校の教室を借りて、学ランまで着ていただいて。」
■地域にいるからできること
東さん
「細尾さんも、濱田さんも自分が住んでいる町だから、働いている町だから、何かしてあげたいという想いが伝わってくるんです。」
濱田さん
「地域にいるから企画しやすいっていう面もあると思います。それがなければ調査からはじめることになりますから。
くまとりうまいガイドも、初めはクーポンが主だったが、2014年以降は、読み物として楽しんでもらえるように熊取の良さを再発見できるようなコンテンツを加えるようになりました。もっと地域の人に参加して欲しい、活性化したいと思い、プレゼントキャンペーンも実施しました。役場や図書館などに応募箱を設置して、町中をめぐってもらったりしました。
自分の作ったものが新聞に折り込まれたり、広報されたりすると、親や知り合いが『見たよ』って言ってくれたりするけど、そういうときは、やりがいを感じます。」
■地域のプラットフォームになる
細尾さん
「この事業は、元々3ヵ年事業でしたが、好評でもう1年できることになりました。4年目が最後だと分かっていたので、残る形式にしたいという思いから冊子にしました。それとwebも一緒に提案させていただきました。紙の発行がなくなっても活用していただけるように。
地域の商店様が個々にホームページを持つっていうのは、ものすごくハードルが高いと思いました。でも、このwebの仕組みを使うと、各店舗ごとにマイページがあり、ブログで情報発信もできるし、webクーポンも発行できます。商工会に入会さえすれば、追加料金なしに、この仕組みが利用できます。」
濱田さん
「各店舗ごとが頑張るのはなかなか難しいと思います。そこに商工会さんが絡んでいただけると全体で盛り上げることができます。」
東さん
「商工会は商工業者の集まりです。これは商工会ができることであり、これが役割だと思います。」
細尾さん
「今、このwebページには100店舗ぐらい登録いただいています。仮に1ヶ月に1回、みなさんが情報発信をいただくと、1ヶ月で100件、1年で1200件になります。以前に使い方セミナーなどは実施させてもらいましたけど、情報を広めていく活動は十分にできていません。今後は、そういう展開も含めてお手伝いさせていただきたいと思います。コロナ禍で、そういう重要性がより高まりつつあると思うので。」
この仕組みは、素直にすごいと思いました。もちろん、日々、一事業者の支援をすることは大切だと思います。でも、このように地域のプラットフォームを作ることは商工会にしかできないことで、これからの社会に求められることだと思いました。
「地域を良くしたい」という想いを共有し、同じ方向を向いて、一つのコトを創り上げていく。ゆるいようでしっかりとしたこの関係性、とても素晴らしいです。
素敵な空間で、素敵なみなさんとの会話、幸せなひとときでした。
あと余談ですが、「くまとりうまいガイド」に掲載されているお店、「んっ、なんかスイーツのお店が多い気がするぞ?」と思いました。なんと熊取には、「こびり」(熊取弁でおやつを意味する)という方言があるらしい。すごい!こんなイベントもあるみたいですよ。ぜひ足を運んでみては。
↓↓↓
「くまとりSANPO COBIRIの日」
熊取町商工会
〒590-0451 大阪府泉南郡熊取町野田2-9-20
http://kumatori-sci.sakura.ne.jp/
株式会社スピッカート
〒590-0432 大阪府泉南郡熊取町小垣内3-3-2
http://spicato.com